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【感想4〈終〉】パワフルポップ。カービィ25周年コンサート(6/18大阪夜)

「星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート」の大阪夜公演感想 Part 4(プログラム10~12、アンコール、エンディング、まとめ)です。

 

 

本記事は、前記事のつづきです。前記事(Part 3)はこちら。

 

htwmc.hateblo.jp

 

MCタイム6

「左から……と見せかけて右!」

 

ステージ右手からこんな小ボケをかましつつ、お一人で登場したのは、桜井政博さん。

 

桜井さんの合図でステージ上のスクリーンに表示されたのは、二ヶ月前におこなわれた東京公演でも大好評のうちに披露されたプレゼンテーションのタイトル「初代『星のカービィ』開発秘話」と書かれたスライドでした。

 

高いプレゼンスキルをお持ちの桜井さんによる、この「初代『星のカービィ』開発秘話」は、東京公演終了後に「ファミ通」の誌面・Web上で文章化され、オーケストラコンサートに行けなかった人にも広く知れ渡りました。

 

この大阪公演の時点で、プレゼンの文章・画像・映像の大部分は、Web上で無料公開済み。すなわち、既にこの開発秘話はいつでもアクセス可能な情報になっているのです。したがって、この大阪公演でわざわざプレゼンをする必要性は、東京公演のときと比べると、ちょっと低くなっているという状況にあるわけですね。

 

桜井さんはそんな状況を承知の上で、観客に対し

 

「でも生で聴いたら、またちょっと違うはずだろうから」

 

という趣旨のことを述べ、プレゼンをスタートさせます。

 

桜井さんの述べた「生で聴いたら、またちょっと違うはず」という言葉は、実際、そのとおりだったと思います。何事においても、「『生で』『実際に』経験する」という刺激はすごく強いわけですけれども、やはり生で聴く桜井さんのプレゼンは、圧倒的に魅力的な代物だったように感じました。なんといっても、桜井さんのお声による説明があるのとないのとでは、分かりやすさや楽しさが段違いなんですよね。

 

桜井さんのプレゼンの手腕を一言で表すと、まさに「鮮やか」ではないかと。そんなプレゼンに、私は前回の東京公演から続いて再びどっぷりと浸かることができ、贅沢な時間を過ごさせていただきました。

 

個人的にも、正直、大阪公演では桜井さんのプレゼンタイムはカットされるだろうと想像していました。なにしろ、Web上で公開された情報ですし。公演全体の時間も、大阪は東京より短かったですから。いやぁ、これは嬉しい誤算でしたね。

 

さて、スタートしたプレゼン。

既に広く公開された情報ということもあり、あえて桜井さんは東京公演よりも手短にサクサクとプレゼンを進行させていました(例えば、東京公演ではあった、観客にワドルディの名前を答えさせるくだりが、大阪公演ではなかった記憶があります)。

 

プレゼン内容はほぼ東京と一緒だったものの、わずかに追加された部分もありました。

 

  • 初代『星のカービィ』の開発機器であるツインファミコンの実機写真を紹介した際に登場した、桜井さん宅のキャット「ふくら」氏。大阪公演では、幼い頃のふくら氏が耳掃除されている、愛らしい写真がお披露目された(桜井さん曰く「……天使ッ!」)。

 

  • ワドルディワドルドゥという名前は、NOA(Nintendo of America)がつけたもの。自分で名付けたわけではないので、二体の名前を覚えるのに苦労した。

 

他にも細かいところだと、話の流れは覚えていないのですが、カービィの落下アクションのことを桜井さんが「プランチャ」と称していましたね。

 

ウィスピーウッズのくだり等、会場大盛り上がりでプレゼン終了。観客拍手。桜井さんは観客の拍手にお答えし、アンコールということで、おまけ話を披露します。

 

東京公演ではこのアンコールプレゼンで、これまで未発表だった開発情報が、本邦初公開されました。それは、『スーパーデラックス』のキャラを、スーパーファミコン開発環境が整うまでの間、ツインファミコンの機材で作って動かしていたということ。その際の開発画面の映像が流されました。

 

しかしこの話は既にWeb上で公開されてしまったということで、大阪公演用に新たなお話を用意してきてくださった桜井さん。

 

そのお話とは……メタナイトについての裏話! メタナイトの話が聞けるということで、会場全体から「おぉ~」と声が漏れました。

 

一ヶ月後に控えるカービィオーケストラコンサートの追加公演に、出演する予定のない桜井さん。このメタナイトの裏話プレゼンが、あとでWeb上に掲載される予定はないそうなので、このプレゼンは正真正銘、この会場限定のものであるとのことでした。

 

以下に、メタナイトについてのレアなプレゼンの概要を述べてみます。

 
前半は、メタナイトの仮面にあいたスリットの、各作品におけるデザインの違いについて。

 

  • V字形をしている、メタナイトの仮面のスリット。スマブラシリーズでのスリットは、公式カービィシリーズのゲームやアニメでのものとは異なり、スリット縦幅がより細いシャープな形状で、さらにスリットの左端・右端部分がカーブしている(そのためスリットの上側が下側よりも長い)等、よりキリッとした印象となるように変更されている。これは、スマブラシリーズに登場する他のシリアスな世界観のキャラと、メタナイトとが並んだ際の違和感をなくすため。

 

 

  • メタナイトに限らず、ひとつの同じキャラクターにおいても、作品の作風・デザインの方向性が変われば、そのキャラのデザインは変わるべきもの。例えば、今後ダークな世界観のカービィシリーズが出てきた場合、スマブラシリーズ風デザインのメタナイトが登場しても不思議ではない。

 

  • メタナイトが、カービィシリーズ第二作『夢の泉の物語』で初登場したときのスリットは、当時のゲーム画面のドット絵を見ればわかるように、高さの低い「U」の字の形だとか、上下逆さまの薄いかまぼこみたいな形だった。今と比べると当時のスリットはだいぶほっそりとした印象。当時のドット絵を見ると、おでこも少し広い感じに見える。

 

  • スリットの形がV字形へと変化していったのは、『夢の泉の物語』で描かれたメタナイトの公式アートワークがきっかけ。これは、任天堂の人が描いたもの。

 

後半は、メタナイトが初登場した『夢の泉の物語』での開発秘話。

 

  • メタナイトは当初、『夢の泉の物語』のゲーム本編中にステージボスとして、二度にわたって登場する予定だった。企画中、メタナイトは一度目と二度目とで異なる性質をもって戦いを挑んでくるというボスだった。結局企画は変更となり、ステージボスとしての登場は一度のみとなった。

 

  • メタナイトの当初の開発名称は、「SMASH META ARMER(スマッシュメタアーマー)」と、「METAMOR META ARMER(メタモルメタアーマー)」の二つ(後者は少し言葉遊びも含まれている)。

 

  • スマッシュメタアーマーの形態は、現在のメタナイト同様の騎士タイプのボス。メタモルメタアーマーの形態は、名前のとおり、メタモルフォーゼ(変身・変形)しながら戦うボス(このへんのお話の一部は、『桜井政博のゲームを作って思うこと』でも言及されています)。

 

  • メタナイトの英語のスペルは「META KNIGHT」だが、「META」とは、「METAL(メタル)」の略。メタナイトという名前は、「鉄仮面をかぶった騎士」ということを示している(「META」には、「メタ発言」という言葉等に代表されるように「高次な・超」というような意味もありますが、そっちの意味ではなかったんですね)。

 

  • 夢の泉の物語』や『スーパーデラックス』におけるメタナイト敗北後の画面外への離脱、『スマブラ』におけるメタナイトの上アピールや登場演出等、マントにくるまり身体を細く変形させるという部分に、変身・変形するメタモルメタアーマーの名残がある。

 

  • マントにくるまり細長く変形するゲーム版のメタナイトに対し、アニメ版のメタナイトは、下半身をマントでくるむいつものスタイルのとき、よく見ると少し身長が伸びている。が、アレは決して変形しているわけではない。多分、クッと背伸びしている。マントの下で。曰く、「カッコつけるのは大変だなぁ」とのこと。

 

「アニメのメタナイトは背伸びしている」というくだりのときは、桜井さんもかかとを上げるジェスチャーをつけていて、特に大ウケでした。

 

以上でおまけのプレゼンも終了。

桜井さんが、プレゼンの締めとして、

 

「今後ともカービィシリーズをよろしくお願いします」

 

とおっしゃってステージを去っていったのが印象的でした。

 

東京・大阪で披露されたこの「初代『星のカービィ』開発秘話」の生プレゼンは、カービィ界隈で多くの人に語り継がれることでしょう。もう、「伝説のプレゼン」と言っちゃっていいと思います。

10 星のカービィ トリプルデラックスメドレー

東京公演の記事に、「狂花水月」のイントロはハープのソロだと書いてしまったのですが、勘違いでしたね。

大阪公演で確認しましたが、「狂花水月」のイントロは、ハープと鉄琴によって奏でられていたようです(東京公演におけるブログ記事の該当箇所は修正しました)。

MCタイム7

MCのお二人と、熊崎さんが登場。

楪さんだったか、

 

「さっきの桜井さんのプレゼン、大阪公演限定ということでしたね。……皆さん、ツイートしちゃってくださいw」

 

みたいにおっしゃって。会場笑い。

 

さて、ここで熊崎さんから、カービィの最新情報の紹介がありました(初代の情報を紹介した桜井さんとの対比になりますね)。

 

「こちらの映像をご覧ください!」

 

という熊崎さんの合図のもと、暗くなるステージ。スクリーンに映し出されたのは、四日前に公開された、「Nintendo Spotlight: E3 2017」における『星のカービィ for Nintendo Switch(仮称)』の映像(↓)。

 


星のカービィ for Nintendo Switch (仮称) トレーラー [E3 2017]

 

映像のはじまり、真っ赤な背景のNintendo Switchロゴアニメーションにおいて、会場中に響いた、Switchおなじみの「カチッ」という効果音に対し、観客は「……うぉぉぉ!」と熱い反応を示していました。みんな大興奮でしたね。

 

カービィと仲間達が4体で車輪状に組み合わさってゴロンゴロンと転がるシーンと、ウィスピーウッズがシリーズ史上最高と思しき凄まじい数のリンゴを落下させているシーンでは、会場内に笑いが起こっていました。

 

映像が終わると、ステージは明転。熊崎さんによる『星のカービィ for Nintendo Switch(仮称)』の簡単な紹介が始まりました。

 

「先程の映像、ナゴが映っていましたね。あ、ナゴといっても、名古屋コーチンではないほうですよ。猫っぽいほうのナゴです」

 

的なことを熊崎さんが。会場笑い。コンサート前半での安藤さんのトークと絡ませてきました。

 

あと、世界観的な問題でしょう、熊崎さんがナゴのことを「猫」でなく、あくまで「猫っぽい生き物」みたいに呼称していたのが印象的でした。

 

カービィと仲間達による協力アクションについて熊崎さんが説明した際、カービィらが車輪状に合体した画像がスクリーンに表示されます。

 

「この画像、よく見ると、バーニンレオの足にカービィの手が届いていないんですよね」

 

たしかに。会場笑い。

 

簡潔にソフトの紹介を終えた熊崎さん、最後に

 

「続報をお待ちください!」

 

というような言葉で締めておられました。

11 星のカービィ ロボボプラネットメドレー

例のミニドラマと社歌。

カービィオーケストラコンサート全公演を終えた大本さんのTwitterでのツイートを拝見していると、一番コンディションが良かったのは大阪公演だった模様です。

 

 

 

また、公演後の大本さんのブログにこんな記述が。

そしてその企画演出から参加し、ミニドラマ台本も書かせて頂き、皆様と一緒に25周年をお祝いできたことが、とっても幸せでしたヽ(´▽`)/♪…

(引用元:星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート千秋楽!!: ホース&ハトック ∞ -無限大-

 

大本さん、クィン・セクトニアとスージーのミニドラマ台本の執筆にも、参加なさっていたとは。台本は熊崎さんが一人で書いたのかなぁと思っていたので、驚きでした。

 

全公演ベストの、生演技に生歌。ほんとうに贅沢な時間でした。

MCタイム8

MCのお二人が登場。「次がプログラム最後の曲です」と曲紹介。

12 星のカービィ Wiiメドレー

「CROWNED」の演奏で用いられたのは、「アンビル」というパーカッション。前回の東京公演終了後に読んだパンフレットで、初めてその存在に気づきました。東京公演では、演奏中のアンビルに全然注目できていなかったので、今回はちゃんと演奏の様子を見られました。二階席からなので遠かったんですけどね。

パンフレットによると、H鋼というものをカナヅチで叩いていたとのこと。

 

なんと言いますか、「こういうパーカッションも、オーケストラで、アリなんだなぁ」と、新たな知見が得られました。

 

メドレーの最後は、「Return to Dreamland」で、スッキリと。

アンコール

プログラム最後の曲を演奏後、鳴りやまない拍手。アンコールがはじまります。

 

登場したのは、MCのお二人と、大原萌さん(東京公演では、MCのお二人だけでした)。

 

楪さんの合図で、ホール入場時に配られた袋を開封します。袋の中には、一本のケミカルライト。桃色・紫色・青色の三色のうち、ランダムで一色が入っていました(自分のは桃色でした。前回は紫色)。

 

楪さんが、ケミカルライトの使い方を説明。楪さんの指示で、例として大原さんがケミカルライトをポキッと折り、光らせてみせます。

この、ケミカルライトの使い方説明は、前回の東京公演にはありませんでした。たしかに、東京公演を鑑賞した方々のTwitterでのツイート等を見ていると、アンコールでケミカルライトの使い方に戸惑った方も多かったようでしたからね。

 

自分が二階席だったのもあり、前回公演よりもたくさんのライトが目に入って、より綺麗に感じました。

 

アンコール曲の曲名を、古川さんが発表。

 

銀河にねがいを:スタッフロール

 

個人的な思い入れも深い名作『スーパーデラックス』の、エンディング曲。キターってなりましたね。

 

東京公演・大阪公演を鑑賞した方々のTwitterでのツイート等を確認すると、両公演ともアンコール曲が昼の部では「あしたはあしたのかぜがふく」、夜の部では「銀河にねがいを:スタッフロール」だったようで。

 

私は東京公演では昼の部を鑑賞していたので、今回大阪で夜の部のアンコール曲も生で聴けて、すごく嬉しかったです。

 

銀河にねがいを:スタッフロール」は、個人的に、『THE VERY BEST OF KIRBY 52 HIT TRACKS 星のカービィ ベストセレクション』の最後に収録されていたのも印象的です。

 

演奏は静かにスタート。古川さん、楪さん、大原さんが、ステージ端で観客席を向き、ケミカルライトを振るタイミングをさりげなくレクチャーしていました。ある程度演奏が進むと、お三方は退場。

 

冒頭、金管楽器だけでワンフレーズ演奏するところがあったんですが、あれだけで涙腺がグッと緩みました。哀愁のある切ない感じで。

 

その後の演奏は、原曲にすごく近いアレンジでした。皮膚がぞわぞわしっぱなし。グリーングリーンズのフレーズの演奏も感動的で。ケミカルライトを振りながら、「これでおしまいなんて寂しいな」と名残惜しい気持ちでいっぱいでしたね。

 

クライマックスはゴージャスでした。目一杯の大きな音で、全てのプログラムが終わりの時を迎えました。

フィナーレ

出演者がステージ上に並びます。

カービィもステージ左手から再登場。去り際に、

 

「ばいばい」

 

と言っていましたね。

拍手喝采で幕を閉じました。心なしか、東京昼公演のときよりも、拍手時間が長かったような気がしました。

まとめ

東京公演と大阪公演の演奏の違いについて、二点述べたいと思います。

 

まず一点目。大阪公演は全体的に、東京公演と比べて明らかにパワフルな演奏になっていました。たしか壇上で池上正さんもパワフルだと述べていて、私もすごく同意した記憶があります。元気でエネルギッシュ。緩急・メリハリが、より効いているような構成だと感じました。

 

二点目。東京と大阪でパワフルさ以上に違いが分かりやすかったのは、その演奏速度です。全体的にスピードアップしていました。カービィの楽曲のほとんどは非常にテンポが速いわけで、それゆえ、大阪公演の演奏は、より原曲に近い印象を受けました。東京公演よりも、カービィ世界へとグッとのめりこめたという感覚でしたね。

 

以上、大阪公演全体の印象は、記事タイトルにもしたように、「パワフルでポップ」というものでした。

 

東京公演と比べてパワフルで、かつ、テンポアップしていた演奏。東京公演終了後の短い期間に、大阪公演に向けて編曲を変更していたのは、まず間違いないでしょう。

 

なお、大阪公演では、少々演奏しづらかったフレーズを、原曲との違和感がなるべく少ないようにしつつも弾きやすく、譜面を変更したというような部分があったのではないかと感じました(「カービィのエアライドメドレー」で、そう思ったのですが……。私の気のせいかもしれません)。

 

(一応補足。あたりまえのことですが、東京と大阪で自分の聴こえ方の印象が変わったように感じた要因は、編曲が変わったこと以外にもあります。一度同様のプログラムを聴いていて展開内容を知っている私は、演奏の展開の一喜一憂が少ないぶん、オーケストラが奏でる音に集中できた度合いが高かったわけで、それが聴こえ方に影響しているのは間違いありません。かつ、会場・座席が異なるので、音の響きがかなり違っているはずです。演奏者も違いますし。)

 

そうそう、オーケストラ人数を、数えてみたんです。数え間違いがなければ、指揮者含め、68名でした。数え間違いがなければ、ですが。

 

個人的には、東京公演以上におなかいっぱいの大阪公演でした。私にとって二回目のカービィコンサートでしたので、演奏・スクリーン映像・照明等の展開を事前に知っていたぶん、心に余裕をもって鑑賞できたためか、じんわり温かい満足感のようなもので、心がいっぱいになりました。 

 

今後のカービィの展開にも、目が離せませんね。

またいつか、こんなコンサートが開催されることを願っています。 

 

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ここまでご覧くださり、ありがとうございました!

 

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