おだやかピクセル

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【感想2】パワフルポップ。カービィ25周年コンサート(6/18大阪夜)

「星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート」の大阪夜公演感想 Part 2(プログラム4~6)です。

 

 

本記事は、前記事のつづきです。前記事(Part 1)はこちら。

htwmc.hateblo.jp

 

 

4 星のカービィ2 なかまメドレー

三曲目が終わって、つづけてすぐに四曲目がスタート。

 

「クーのテーマ」の演奏は、カスタネットの音色が特徴的でした。奏者は、両手にセットしたカスタネットを、座りながら両太ももに当てて鳴らしていましたね。

MCタイム3

東京公演同様、石川淳さん・安藤浩和さん・池上正さんという、歴代のカービィ音楽を作曲してきたレジェンドが登壇。

 

壇上の石川さんは、

 

「昼公演と違うことを思いついたのでそれを話しますね」

 

と、『スーパーデラックス』のメタナイト戦のBGMを作った際のエピソードを披露。

 

当時ディレクターだった桜井さんからのメタナイト戦BGMサウンドのオーダーは、当初、「あまりボス戦闘ぽくなく、イメージは例えば『ジュリアナ東京』(!)みたいな感じの曲」というもの。

 

しかし、当時開発期間が長引くことが予想された『スーパーデラックス』。ゲームが完成した頃には、もう「ジュリアナ東京」はなくなっているかもしれない。そんな理由等もあって、「ジュリアナ東京」っぽい曲にするのは結局やめることになったそうです。

 

ところが、あらためて石川さんがいざ曲を作ろうとしても、当初のオーダーである「ジュリアナ東京」というワードのイメージが頭からこびりついて離れません(たしかに「ジュリアナ東京」はパワーワードですよね)。

 

困った石川さん。「ジュリアナ東京」をどうにかして頭の中から振り払うために、考えついたのが、「曲を五拍子にしよう」ということ。そんな経緯があり、メタナイト戦の五拍子の曲ができあがったそうです。

 

(この石川さんのMCトークのあとで桜井さんが登壇した際、桜井さんは「当時、本当は『ジュリアナ東京』というよりは『レイヴ』っぽいイメージでオーダーをしたつもりだった」と語っています)。

 

それにしても、メタナイト戦の曲が、まさか「ジュリアナ東京」から出発していたとは。興味深いエピソードです。

 

楪さんが石川さんに、

 

「この会場のお客さん、『ジュリアナ東京』って知っているんでしょうか……?」

 

と尋ね、笑いを誘っていました。

石川さんは、

 

「昔そういう、一世を風靡したディスコがあったんですよ」

 

などと対応していたように思います。

 

そういえば、楪さんと石川さんの対話トークのうしろで、古川さんが「ジュリアナ東京」流行時のバブリーなディスコダンスを披露していましたね。扇を持ったふりをして、踊っていました。

 

石川さんのトークは、東京公演も面白かったのですが、大阪公演も面白かったです。笑いどころたっぷりで。

 

なんといいますか、石川さんはトーク内容を、笑いどころ含めて、頭の中である程度ハッキリと描いてから、話し始めておられるような印象を受けました。

こういうトークの仕方って、私の周囲では聞いたことがないです。石川さんは順序よく整然と話されるので、私達はストンと理解・納得でき、聞いていて気持ちがいいんですよね。不思議とホッとします(この、理路整然と話す感じというのは、ハル研究所任天堂の元社長である岩田聡さんに、少し似ているような?)。

 

石川さんは、我々の想像している以上にユーモア溢れる方なのではないでしょうか。「もっとお話を聞きたい」と思わせる、そんな魅力を感じました(石川さんが多忙なのは重々承知していますが、他のメディア等で色んなエピソードを伺ってみたいなぁと思ってしまいます)。

 

安藤さんは、東京公演と同じトーク内容に、プラスアルファ上乗せしたお話を披露。

 

「『ロボボプラネット』の効果音として本物のニワトリの鳴き声を使った」という、「Miiverse ロボボプラネット スタッフルーム」で明らかにされたエピソードに、新たな情報が加えられました。

 

その「Miiverse スタッフルーム」のエピソードで当時話題になったのが、鳴き声に使用したニワトリのお名前。なんと、「ナゴ」というそうで。「ナゴ」といえば、『カービィ3』に登場する猫キャラクターと同じ名前。「なぜニワトリの名前が、『カービィ3』の猫のナゴと、同じなのか」と、当時いろんな憶測をよびました。

 

そんななか、今回のコンサートのMCトークで、新事実が判明。

以下のような感じの会話のなかで、発覚します。

 

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安藤「自宅で飼っている二匹のニワトリのうち、声を収録したほうの名前は、『ナゴ』といいまして」

 

楪「え、『ナゴ』? どうしてそんなお名前を?」

 

 

 

 

 

 

 

安藤「えっと……『名古屋コーチン』だから、ですね」

 

 

 

 

 

 

 

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ズコー。そっちかい。

大いに笑いました。はい。

会場大ウケでした。まさか由来が「名古屋コーチン」の最初の二文字だったなんて。

 

その後、安藤さんは、

 

「ネット上で『なぜニワトリなのにナゴなのか』と不思議がられていたみたいですが……」

 

と語っておられました。あのネット上の反応は、安藤さんの耳にも届いていたんですね。

5 星のカービィ3&64メドレー

「VS.ゼロ・ツー」は、照明の演出もよかったんですよね~。ステージ上が真っ赤に染まって。

 

また、演奏とスクリーン映像とがシンクロし、ピッタリと合っていた瞬間があったことを記憶しています。

そのシンクロの瞬間というのは、大体こんな感じでした。想像してみてください。

 

スクリーンに流れているのは、『カービィ64』のラスボスであるゼロ・ツーと戦闘しているゲーム画面映像。演奏曲の後半に位置する、階段を少しずつ上がっていくようなフレーズの最後、一番演奏が盛り上がるまさにその瞬間に、スクリーン映像のゲームのゼロ・ツーが撃破されたのです。

 

あれ、音と絵がガッツリとハマって同期していて、本当に爽快で感動しました。気持ち良かったです。

 

このあと映像は、ライフが尽き今にも爆発しそうなゼロ・ツーの内部から白い光が漏れ、次第に画面全体が白くフェードアウトします。それと同時に、静かなストリングスの音色で、あの終息へと向かうようなフレーズが演奏されました。この演出も情緒的で良かったです。

 

最後は「デデデン!」と大きな音でクライマックスを迎えて演奏終了。やはり名プログラムだと思いました。

 

今回の「VS.ゼロ・ツー」の演奏のシンクロ、果たして、偶然だったのでしょうか。それとも、意図的だったのでしょうか。

 

もしかすると、オーケストラ演奏とスクリーン映像がたまたまピッタリ合っただけだという可能性も、否定はできません。実際、この大阪公演の約一ヶ月後におこなわれた追加公演・夜の部のニコニコ生放送配信映像では、この大阪公演ほどのシンクロはしていなかったように感じました。

 

とはいえ、あれだけ大阪でシンクロしていたのですから、「演奏と映像を、なるべく意図的に、合わせよう」という努力はきっとあったのだろうと私は思います。なんといっても、指揮者が竹本泰蔵さんですからね。

 

調べてみますと、今回のカービィオーケストラコンサートの指揮者である竹本泰蔵さんは、演奏と映像をシンクロさせるような公演を、数えきれないほど経験していらっしゃるそうで。まさに百戦錬磨の手腕をお持ちの方だからこそ、今回の素晴らしいゼロ・ツー撃破シーンを演出できたのではないかと。

 

演奏と映像のタイミングを合わせることは、すごく難しいことだろうと想像できます。

指揮者が指揮棒を振るスピードが、ほんの少し早かったり遅かったりするだけで、どんどん映像のタイミングとズレていっちゃうわけですから。

演奏が後半に近づくほど、小さなズレが加算的に蓄積され、大きなズレになりますものね。

 

「演奏会での一発勝負」というのも、難易度の高さに拍車をかけていますよね。

映画作品等では、できあがった映像とピッタリ合うように、オーケストラがスタジオで演奏を収録することも多いようですが、この場合、時間と体力が続く限りではあるものの、一応は録り直せるわけで。

 

「タイミングの合った演奏」というと、毎年の大晦日の東急ジルベスターコンサートが思い出されます。オーケストラの演奏終了の瞬間に、年越し。すごいことですよね。

MCタイム4

ここで登場したのは、本日二度目の桜井さん、そして、大本眞基子さん。

 

大本さんから、まずはカービィの演じ方についてのお話。

カービィは男の子でもなく女の子でもない感じ、ナチュラルさやニュートラルさを重視して演じているとのこと。

また、アニメとゲームでは、少し演じ方を変えているのだそう。

アニメの場合は

 

「ぽよぉぽよっ♪」

 

とかわいさメイン。ゲームの場合は

 

「はぁい! えいっ!」

 

と、アニメよりも声の高さをほんの少し低く、よりナチュラルな感じで、演じ分けているそうです。

(上記のカービィのセリフは、大本さんの生吹替! 会場大盛り上がりの拍手。)

 

ここで楪さんが

 

「先程の大本さんの演じ分けを聞いた感じだと、どちらかというとゲームのほうがやんちゃっぽいイメージでしょうか?」

 

と尋ねると、桜井さんが

 

「いや、逆ですかね」

 

と答えたのが印象的で記憶に残っています。

 

また桜井さんから、カービィの声の配役は初代『大乱闘スマッシュブラザーズ』で決まったものだと語られました。

 

当時のオーディションには、カービィ役の候補が二人参加していたそうです。そのうちの一人が大本さん。オーディションの結果、より自然でナチュラルさの感じられる大本さんが、カービィ役に決まったとのこと。

 

たしかこの話の流れで大本さんが、初代『スマブラ』でのカービィ

「ぴーけーふぁいあー(PKファイアー)」

を再現してくださいました。すごくうれしかったです。耳が幸せ。

 

(このあたりの内容は、そういえば東京公演のときにもある程度は同様のお話をされていたはずなので、当該ブログ記事に、今更ながら、追記しておきます。)

 

また、大本さんは壇上で桜井さんへ質問。

  • カービィメタナイトの性別は?」
  • 「性別がないなら、不思議空間から突然発生するの?(どうやって産まれるの?)」

等の疑問をぶつけていました。

「不思議空間」というワードが、なんとも可笑しかったです。

 

この質問に対し、桜井さんの回答としては、

  • 「もし今ここで性別を答えて、それが公式設定になってしまうのは、非常に危ない。まあメタナイトは女性が似合わないキャラクターではありますけど……」
  • 「設定って、不思議なままのほうがいい」
  • カービィは宇宙人ですからね。例えば『分裂して増える』等、なにがあっても不思議ではない」


みたいな感じでした(順不同)。

 

あと、 どのタイミングでの発言だったか覚えていませんが、こんな面白い会話も。

 

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楪「カービィ、こう見えて、25歳……」

 

桜井「子供がいてもおかしくない年齢ですね」

 

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また、これも文脈は忘れましたが、壇上の桜井さんがカービィのことを「はるかぜとともに現れた若者」と評していたはずです。初代『カービィ』の取扱説明書の文言。

なので桜井さんは、

 

カービィというキャラはパッと見『幼い子供のキャラ』っぽいが、本当はそういう趣旨のキャラではない」

 

ということを語っていました。

ただ、そのあと、少し小声で

 

「精神年齢は三歳児くらいかもしれませんけど」

 

ともおっしゃっていましたね。

 

「大本さんのお話を伺っていたら……カービィに……会いたくなってきました!」

 

と古川さん。間髪入れずに楪さんが、

 

「……というフリをありがとうございます古川さん!」

 

と返します。ナイスコンビネーション。

 

楪さんの合図で、スペシャルゲストが登場します。スペシャルゲストはなんと、カービィ! 東京会場だけでなく、大阪会場にも遊びに来てくれました。

 

東京ではステージ中央から登場したカービィ(の着ぐるみ)でしたが、大阪ではステージ左手から、とてとて……っと登場。会場爆笑。めっちゃ機敏に動くカービィ、おもしろすぎます。動きが愛らしい。

 

カービィ登場時、大本さんによる生アフレコが。

 

「スピンキック! ライジンブレイク!」

 

と、ファイターカービィの技を、アニメ版で。

 

 ここで唐突に楪さんが

 

「皆さん、今日は何の日ですか!?」

 

と観客へ尋ねます。

すると会場の一部から、

 

「父の日~」

 

という声が返ってきまして。

楪さんは、

 

「……ということはつまり、桜井さんの日ですよ」

 

と桜井さんに。

そんな流れで、アニメボイスのカービィさんが嬉しそうに、桜井さんのことを何度か

 

「ぱぱ♪」

 

と呼んでいたんですよね。このセリフの破壊力たるや。おそろしかったです。Twitter等でのお客さんの反応を見た限り、これにやられたという人も多かったようで。かわいさの暴力とはまさにこのことでしょうか。私は何を言っているのでしょうか。

 

また、たしかこんな会話があった記憶もあります。

楪さんがカービィに、

 

「今日は父の日だけど、カービィはパパにプレゼントあげたのかな?」

 

と尋ねると、カービィ

 

「ぽ、ぽよ……」

 

とビミョーな返事。ここですかさず桜井さんが、

 

「……わかってないようです。……地球の文化について」

 

とツッコんで。ウケていました。

 

コンサート後に思ったんですが、このときの桜井さんの「……わかってないようです」と、『スーパーデラックス』の「初心者の部屋」におけるカービィの紹介文「……なやみのないやつです」とが、なんというか、妙に雰囲気が似ているなぁと。

そう考えたら、「初心者の部屋」のナレーション文章が、全て桜井さんボイスで脳内再生できそうな気もしてきますね。

 

さて、このあと、カービィの25周年を祝って、ハッビーバースデーの曲が演奏されます。この辺りは東京同様。壇上の出演者が歌い、歌の最後に、客席みんなで

 

カービィおめでとう!」

 

と声を合わせます。

 

「ぽよぽよ♪」

 

と嬉しそうなカービィ

 

歌の終わりに、熊崎さんがケーキをカートに載せて運んでくると、カービィ

 

「ケーキィ……、ケーキィ……」

 

と、取り憑かれたかのように、ケーキに向かってまっしぐら。シャカシャカシャカ……と素早く近づいていきます。そんなカービィに恐れをなして、熊崎さんはケーキを載せたカートごと後ずさり。

 

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楪「カービィがケーキを食べたら、コピー能力は?」

 

熊崎「『パティシエカービィ』……ですかね」

 

桜井「いや、食って体力回復するだけでしょ」

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大ウケ。

 

……いやぁ、盛りだくさん。楽しいコーナーでした(熊崎さん、東京では「スイーツカービィ」だったのに、変えてきましたね)。

 

大本さんは終始、ステージ上で自然で飾らない雰囲気で振る舞っていらっしゃいました。その佇まいを観ていると、自然なナチュラルイメージのカービィ役を大本さんが射止めたという事実に、なんだかすごく納得してしまったような気分になりました。

6 星のカービィ スーパーデラックスメドレー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(心なしか、ここ、東京公演のときよりも少しウケが良かった気がします)

 

 

 

 

 

 

……はいっ(?)

 

つづいて「VS.マルク」パートについて。おぼろげに月が輝く夜を表したような怪しげな編曲は、まるでダークファンタジー映画のサウンドトラックのよう。

 

また、東京公演では気付けなかったんですが、「VS.マルク」でのステージ照明が素敵だったんですよ。マルクの翼部分を再現したようなライトが、ステージの一部を照らしていて。虹色に輝くカラフルな、トゲトゲした形が映し出されていて、綺麗でした。

 

あと、「VS.マルク」について、以前の東京公演の記事で私はこんなことを書いていたのですが。

 

変拍子なので、指揮するのがすごく難しい曲です。なのですが、竹本さんの指揮のご様子を見るのをすっかり忘れていました(大阪公演では忘れずチェックしたいです)。

 

そういうわけで、ちょっとでもその指揮の動きを本大阪公演記事で文章化できたらいいなぁという淡い期待を抱きつつ、竹本さんの「VS.マルク」の指揮の様子を注視していました。

 

しかしですね。はい、「VS.マルク」の指揮、ド素人の私には、なにがなにやらさっぱりでした。まさに複雑怪奇。我々一般人ごときが、一回見ただけでは到底真似できるような指揮ではなく。とてもとても文章化できない代物でした。改めて、プロの指揮者の凄さというものを感じましたね。

 

 

ここで休憩時間。第一部は終了です。 

 

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第二部、プログラム7曲目以降は、次回の記事で。

(……Part 3へ続きます>>>)