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【感想4】やすらぎのオーケストラ。カービィ25周年コンサート(4/16東京昼)

「星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート」の感想 Part 4(プログラム7~9)です。

 

〈※ネタバレ注意〉

 

本記事は、前記事のつづきです。前記事(Part 3)はこちら。

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約20分の休憩の後、第二部がスタート。

 

演奏者登壇、コンマスさん登壇、チューニング、そして指揮の竹本さん登場……と思いきや、ちょっと雰囲気が違うような。まさか……。

7 カービィのエアライドメドレー

演奏開始直後、スクリーンには、「カービィのエアライドメドレー 指揮:酒井省吾」の文字が。やはり酒井さんでした。

このメドレーでは、竹本さんの代わりに、『カービィのエアライド』の作曲に参加された酒井省吾さんが指揮を担当。「自分がかつて作曲したゲーム音楽を、後々実際にオーケストラの前で指揮し、その生演奏を観客に発表できる」。こんな機会を経験できた人は、地球上にほとんどいないのではないでしょうか。無上の喜びですよね。

 

私は酒井さんを「PRESS START」最終公演で一度拝見しています。当時、あたりの柔らかい、優しそうな印象を受けたことを覚えています。 

酒井さんの曲も特徴があると私は思っているのですが、その聴き分け方を言葉で説明するのは個人的に難しいです(身も蓋もない言い方をすると、初めて聴くカービィの曲で「『MOTHER3』に登場した曲になんだか似ているような……」と感じたら、それはだいたい酒井さんの楽曲だろうという気がしています)。

 

パンフレットによると、酒井さんは今回、ほとんどの編曲を担当されたようです。また、企画原案も酒井さんとの記載があり、今回のコンサートで相当尽力なさったことがうかがえて、頭が下がる思いです。

 

さて、まず始まった演奏は「エアライド:プランテス」。草原のコース。かけ上がるようなあの出だしの音も好きですし、前半は華やかで、後半はレース争いの熱さがあるという、二つの面を併せ持つ名曲だと思います。原曲に近いアレンジでした。


つづいて火山のコース「エアライド:マグヒート」。アニメのクライマックスで流れたのも印象的な曲。これも原曲に近かった記憶があります。後半の盛り上がるフレーズの金管楽器が勇ましくて格好よかったように思います。


スクリーンがシティトライアルの映像に切り替わると、「伝説のエアライドマシン」の演奏に。エアライド開発中に桜井さんがこの曲を作曲オーダーしたときのワードイメージが、桜井さんの著書に載っていたことを思い出します(『桜井政博のゲームについて思うこと 2巻』)。勝利フラグ的な勇猛果敢なメロディは、オーケストラに映えましたね。

MCタイム5

指揮を終えたばかりの酒井さん、竹本さん、そして大原萌さんが壇上に。

 

大原萌さんは、ハル研究所のサウンド担当で一番の若手で、カービィと同じ25歳。メディアや公の場に姿を見せるのは初めてではないでしょうか(端正な雰囲気でいらっしゃいました。あと「萌」で「めぐみ」と読むとは、今回初めて知りました)。酒井さんと共にハル研究所東京勤務。カービィカフェのCDの曲解説によると、フルート奏者のようです。またパンフレットによると、スーパーレインボーの名曲「天かける虹」は大原さん作曲とのことで。カービィサウンドに新しい風を運んでくださることでしょう。

8 星のカービィ 鏡の大迷宮参上!ドロッチェ団メドレー

 親和性の高い二つのゲームのメドレー。

 

「森・自然エリア」は、『鏡の大迷宮』の人気曲。ほぼメインテーマですね。一見カービィらしい曲ですが、カービィらしくない感じも併せもっているような、独特で不思議な曲。今回の編曲は、爽やかな朝を迎えられそうな、ストリングスメインの、高貴な宮廷風だったという記憶があります。カービィカフェでのアレンジを聴いて感じたときと同じ印象を受けたことを覚えています。


「宇宙エリア」。これも、一見カービィらしい曲ですが、カービィらしくない感じも併せもっています。原曲のような派手さは少なめだったように思います。


つづいて『星のカービィ 参上ドロッチェ団』より、「プリズムプレインズ」。前の二曲と違い、間違いなくカービィらしさ満点。タッタカタッタカというリズムが特に。カービィ64のポップスターやカービィ3の1-3ぽいですね。最初のステージ感満載。

この曲も、原曲の忙しなさのない編曲。ゆったりした小洒落た小編成ぽい室内楽のようでした。


ドロッチェ団のテーマ」。原曲は“憎めない小悪党”というイメージの曲ですが、今回の編曲は、より悪~いイメージが増幅されていた印象だった覚えが。原曲よりゆったりしたテンポでした。特筆すべきは、冒頭のネズミの「チューチュー」サウンドの再現ですね。

 

パンフレットにもあるとおり、すべて弦楽器のみのメドレーでした。

9 ボールになったカービィメドレー

ここまでとちょっと趣旨が異なる、カービィのボール系ゲームの有名な曲を繋ぎあわせたメドレー。パンフレットによると、このメドレーのみ編曲は大原萌さんとのこと。


カービィのピンボール』より「ウィスピーウッズランド」。(このへん記憶が怪しいのですが、)楽しげな編曲だったような気がします。

 

カービィボウル』より「コース8:雪ステージ」。木管楽器が合います。原曲に近い、きれいな曲で癒されました。ぞくぞくしました。

 

ここで静かな曲調に。ほんのひとときの静寂のなか、鳴り響く鐘の音(たしかそうだったはず)。スクリーンには『タッチ!カービィ』の最終ステージ「ワールド・オブ・ドロシア」の映像。

そう、次の曲は「ドロシア・ソーサレス」です。


個人的には、彼女もこの曲も怪しくてとても好きです。冒頭はパイプオルガンのみで、その後突如、激しいエレクトロニックなパーカッションが流れはじめるという、当時のカービィにはない、斬新なバトル曲。古風なパイプオルガンと現代風のパーカッションという、水と油のような二つが見事に組み合わさっていて、しびれます。

 

さて今回の編曲は、例の激しいパーカッションはなく、あのメロディが静かに力強く悲しく奏でられていました。オーケストラに映える編曲で大変感動しました。

 

(余談。今回のコンサートのどの曲のパートだったか忘れましたが……。紫色のライトがステージを照らすという演出の際。そのライトに照らされ紫色に輝くホルンが、一瞬、ドロシアの魔女帽子に見えたんです。それが「ドロシアの帽子がステージ上に登場する演出!?」となぜだか思ってしまって、ハッと妙にすごくびっくりしたんです。……はい、それだけです。)


ドロシアのあやしい曲から、一転、とってもさわやかな曲。『タッチ!カービィ スーパーレインボー』の空のステージ曲「天かける虹」です。前述のとおり、大原萌さんの作曲。原曲に近い雰囲気でアレンジされていた記憶があります。本当にさわやかで美しくて、ぞくぞくしました。

 

(それにしても、他の作曲者陣よりは10年以上後輩の大原さんの曲が、シリーズの25周年ということで先輩の曲と一緒にオーケストラ演奏されるというのは、大原さんにとって幸せな経験だろうと思います。この経験が、大原さんの今後の大きな活力に繋がることを願います。今後のシリーズを背負うかもしれないプレッシャーに、打ち勝って欲しいですね。)


これら4曲のメドレーの元となったゲームは、製作された時代やゲームビジュアルの雰囲気の幅が広かったため、スクリーンの映像の印象が(ボールだけに)コロコロ変わって、目でも楽しめました。ゲーム機やビジュアルの変遷・進化を感じられるメドレーでもありました。

 

プログラム10曲目以降は、次回の記事で。

(……Part 5へ続きます。↓からどうぞ)

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