「星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート」の感想 Part 3(プログラム4~6)です。
〈※ネタバレ注意〉
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本記事は、前記事のつづきです。前記事(Part 2)はこちら。
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三曲目が終わって、続けてすぐに四曲目がスタート。
「リックのテーマ」はピッチカートがメインでした。可愛く小綺麗。
「カインのテーマ」は、ゆったり癒される感じだった記憶が。
「クーのテーマ」は、フラメンコのような情熱的なものでした。
カービィのおともたちが全員フィーチャーされていて、とてもうれしいメドレーでした。
MCタイム3
ここでまさかまさかの、石川淳さん・安藤浩和さん・池上正さんの登壇。
石川さんは初代『星のカービィ』から、安藤さんは2作目『夢の泉の物語』から、池上さんは3作目『カービィのピンボール』から、カービィのゲームソフトの作曲を担当し始め、それ以来、数多のカービィサウンドを紡いできた方々です(近年、池上さんは作曲以外のところでご活躍のようですね)。
熊崎さんのサプライズ登壇があってから、作曲者陣の登壇にちょっとだけ期待していましたが、まさか本当に実現するとは。だって、あの、石川さん安藤さんですよ。本当に感無量で。言葉になりませんでした。
私がカービィのソフトで触れあう時間が長かったのは、石川さんがメインで作曲を担当された『スーパーデラックス』、『星のカービィ3』、『星のカービィ64』だったように思います。それもあってか、どちらかというと石川さんの楽曲は、より私の琴線にふれるんですよね。ハートをド直球で貫く感じ。また石川さんは、生演奏よりは、打ち込みがメインでいらっしゃいますね。
これに対し、安藤さんの楽曲は、切なさ・哀愁の感じられるものが多いのが特徴だと思います。個人的には、初めて聴くカービィの曲で「あ、切ないな」と感じたら、それはだいたい安藤さんの楽曲だと思ってもいいような気がします(もちろん例外はあります)。Wii以降は、複雑な演奏の生演奏っぽいピアノがメインの曲も多く、美しい旋律にほれぼれします。ニワトリ好きなことでも有名です。
壇上の石川さんは、桜井・熊崎両ディレクターのサウンドの指示の出し方について語っていました。
具体的には、だいたいこんな感じのお話。
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「桜井さんと熊崎さんはタイプが異なります。
桜井さんは迫力と擬音の人。桜井さんによる、私へのサウンドの指示は、例えば、
『この曲をもっと“ぐわーっ!!!!!”としてください』。
で、作り直すと桜井さんは
『そうじゃなくて“ぐわーっ!!!!!”』。
で、また作り直すと桜井さんは
『そうじゃなくて“ぐわーっ!!!!!”』。
で、私は
『……私はどうしたらいいんだぁー……(頭を抱える)』。
……というのが私の仕事です」
会場爆笑。
「それに対し、熊崎さんは指示が具体的な人。私が作った曲データを、コンピュータの前で熊崎さんに聴かせると、熊崎さんはコンピュータの作曲ソフト画面の要素をひとつひとつ指差しながら、
『ここのメロディを、こことこことここでも鳴らして、あとここからここまで2倍にしてヘビメタにしておいてください』。
で、私は
『……私はどうしたらいいんだぁー……(頭を抱える)』。
……というのが私の仕事です」
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短いお話だったのですが、石川さんのお話はとても面白かったです(落語のような安定感というか、何度聞いても笑ってしまうというか、洗練されているというか、鉄板ネタのような趣があるというか)。
安藤さんは、「『ロボボプラネット』の効果音として本物のニワトリの鳴き声を使った」というエピソードを披露。「Miiverse ロボボプラネット スタッフルーム」で明らかにされた、あの話ですね。実直そうなお人柄と語り口が印象的でした。
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安藤「ニワトリの声を使うことに決まったその日の夜、家に帰ってニワトリにマイクを向けたんですが……なかなか鳴いてくれなくて……。ニワトリって夜は静かだから……。」
楪「あ、あの、すみません安藤さん。そもそもニワトリを、自宅で飼っていらっしゃる……!?」
安藤「はい(即答)」
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というようなやりとりがあった記憶が。安藤さんのお話では、そのやりとりが特に面白かったです。
『星のカービィ3』より、「海ステージ」。おしゃれで爽やかな雰囲気を残した編曲で、はじまりかたも素敵(パンフレットによると、“モーツァルト風”)。
つづいて、あやしさが好きな「砂漠ステージ」。原曲に忠実でした。パーカッションも砂漠っぽくて、いい感じ。
ここから『星のカービィ64』のパート。
最初のステージ曲「ポップスター」。パンフレットによると“ポルカ風”のアレンジ。底抜けの明るさ、という感じでしょうか。
つづいて人気曲「リップルスター:ステージセレクト」。涙腺が緩みました。オーケストラ映えしますね。美しかったのと同時に、スクリーンには、ゲームにてリップルスターへ向かうムービー(ムービー名「やらいでか」)が流れており、熱さも感じられました。
その流れから、静かな曲調に。次はどの曲だろうと思っていたら、淡々としたスネアドラムとともに、ラスボス戦BGM「VS.ゼロ・ツー」のフレーズが。思わずぶるっと身震い。スクリーンムービーからのつながりがすばらしかったです。
「VS.ゼロ・ツー」は、プレイ当時衝撃を受けた異質な曲です。当時のどのカービィ楽曲にも似ていない、神聖で不気味で斬新で少し前衛的、おまけに熱い。他のカービィ楽曲とは一線を画す、魅力あふれる楽曲です(『カービィ64』発売以降、「VS.ゼロ・ツー」に似た雰囲気の楽曲としては、『ロボボプラネット』の最終ボスの第二形態のBGM「主のいないインテルメッツォ」が挙げられます)。
今回の「VS.ゼロ・ツー」の演奏、まずは不思議な音色の楽器が登場しました。調べたところ、おそらく「ハーモニックパイプ」、または「サウンドホース」という楽器だろうと推測しました。洗濯機のホースのような形状の楽器を頭上で振り回されることで、「ヒョンヒョンヒョン……」と宇宙的な音色がホールに響きわたりました。オーケストラには似つかわしくないこの珍しい楽器が、カービィには似つかわしくないこの異質な楽曲の雰囲気をあらわすのにぴったりで、ナイスなチョイスだと思いました。
徐々に盛り上がっていく編曲も最高に合っていて。これはパンフレットによると、“ラヴェルの「ボレロ」風”とのことでした。重厚感ある終わり方だったように思います。
MCタイム4
ここで登場したのは、本日二度目の桜井さん、そして、大本眞基子さん。ここまでで一番の拍手だったような気がしました。
まずは、カービィの演じ方に関する話が始まりました。そのとき、大本さんが唐突にカービィのアニメボイス「ぽよっ!」なんて言うものですから、ホール中あらゆる座席から「(ひゃ~、本物だ~)」というような、声にならないため息が漏れていました(このときのホール中のため息の音を、私は生涯忘れないでしょう)。
また桜井さんから、カービィの声の配役は初代『大乱闘スマッシュブラザーズ』で決まったものだと語られました。
当時のオーディションには、カービィ役の候補が二人参加していたそうです。そのうちの一人が大本さん。オーディションの結果、より自然でナチュラルさの感じられる大本さんが、カービィ役に決まったとのこと。
他にも大本さんは、アニメのカービィやメタナイトの設定について、壇上で桜井さんに質問していました。桜井さんの回答としては、
- 「アニメはアナザーワールドと思っていただければ」
- 「メタナイトとカービィの関係は、今ここで答えると公式設定になってしまい熊崎くんがとっても困ることになるので、秘密」
- 「設定って、不思議なままのほうがいい」
などなど。
生みの親の回答は、とても興味深いです。かつ、自分の発言にどうしても大きな影響力があらわれてしまうことを重々承知して、慎重に、しかしあくまでフランクに回答をしておられたように思います。カービィシリーズのことを大切に扱っていることが垣間見えたような気がしました。
自然体の大本さんとツッコミ役の桜井さんとのかけあいは、お二人の仲の良さがあらわれていたように思います。
「大本さんのお話を伺っていたら、カービィに会いたくなってきました」と古川さん。と、ここで楪さんから突如、スペシャルゲスト登場のアナウンス。ざわめく会場。
そのゲストとは……
「カービィです!」
ホール中が「???」となりました。
直後、会場爆笑。
だって、本当にカービィが登場するんですもの。本物ですよ。いやあ、やられました。
桜井さんいわく“スマブラサイズ”の、機敏に動くカービィ(の着ぐるみ)は、「ぽよぽよ」と言いながら(大本さんの生アフレコ!)、会場を文字通り「かき回して」いきました。まさしく「かき回す」という言い方がぴったりあてはまるような感じでしたね(辞書で引いた「かき回す」という言葉の使用例として、このときの出来事を載せてはいかがでしょうか。私は何を言っているのでしょうか)。
その後、東京フィルによる、(ちょっと大げさではないかと思ってしまうくらい)ベリーゴージャスな演奏のもと、(桜井さんいわく“子供がいてもおかしくはない年齢の”)25歳のカービィへ向けて、檀上の出演者がハッピーバースデーの歌をお届け。大本さんはもちろん、桜井さんもいいお声。
歌の最後は、客席みんなで声を合わせて「カービィおめでとう!」とお祝いするなど、なごやかな雰囲気でした。
歌の後、熊崎さんがケーキを運んで登場してきたのですが、カービィはそれ以降ケーキのことしか頭になく、ずっと「ケーキ♪ケーキ♪」と言っていました。
楪「カービィがケーキを食べたら、コピー能力は?」
熊崎「『スイーツカービィ』……ですかね?」
桜井「いや、食べ物なんでただ食ったってだけでしょ」
さながらコント。
桜井さんが終始冷静だったというギャップもあり、ここまででいちばん楽しいコーナーとなりました。終始会場ざわざわ。なんといいますか、良い意味で精神年齢が下がる、微笑ましさ満点・癒され度満点のコーナーでした。ええ、カービィがただただかわいかったです。
私は大本さんを生で拝見するのは初めてで、それだけで感動ものなのに、さらに生カービィボイスが(本当に本当に!)大盤振る舞いされてしまい、もうたまりませんでした。おなかいっぱいでした。
徹底的にカービィにかき回されたあと、前半最後のプログラム。
個人的に、何度もプレイした、一番思い入れの深い作品のメドレー。
まず、「グランドオープニング」。「ピコーン♪」というイントロが再現されていて、感動でした。原曲よりゆっくりしたテンポ。スクリーンには当然、『スーパーデラックス』のオープニング映像。ここで会場は、なんだかそわそわするわけです。「アレがくるんじゃないか?」と。
オープニングデモが終わり、タイトル画面映像。このタイトル画面がけっこう長く表示されたので、「あ、アレはないかな……?」とホッとしかけた矢先。
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(あの、「ここで笑い声をあげるのはちょっと、チガうのではないか、配慮に欠けるのではないか」と皆が思いつつも、残念ながらどうしてもこらえきれずに確かにしっかりと会場の座席全体から漏れた、複雑で悩ましい感情のこもる、なんともいえない静かで湿った笑い声。私は生涯忘れないでしょう。)
……さて(?)
ざわざわしながら始まった「激突!グルメレース」。『スマブラ』シリーズでも初代から使われている、カービィシリーズを代表する曲です。聴いているとなんだか慌ててしまう曲。原曲に近い編曲でした(出だしだけスローペースで、ちょっと『スマブラDX』や『エアライド』の曲「夢の泉」っぽかった記憶もあります)。スクリーンには、コース1とコース3が映っていたはずです。
「水晶の畑エリア」。「洞窟大作戦」で使われた曲ですね。「グリーングリーンズ」の初めてのオーケストラアレンジ曲が、この記念すべきオーケストラコンサートで演奏されました。よい選曲。原曲に忠実だったように思います。スクリーンには、あのゲーム内の幻想的な各洞窟の光景。もともと広大さの感じられるこの曲が、オーケストラ生演奏によって、より音の広がりを感じることのできる曲になっていたように思います。雄大な洞窟探検感あふれるパートでした。
つづいて「メタナイトの逆襲:戦艦マップ」。前の曲からの流れで、テンション上がりまくり。「いよいよ始まる」感がある曲ですよね。ゲームを普通にプレイしているだけでは、出だししか聴けない曲。フルで初めて聴いたのは、アニメカービィだった記憶があります。アニメでは、レース前、コロシアム試合前、ハルバード発進前などで使われていました。
そして「VS. マルク」。最近ぬいぐるみが発売された屈指の人気者、やはり選曲されましたね。もともとオーケストラ風のこの曲。ゆったりとあやしい、ラスボスの貫禄ある編曲だったように思います。なんというか、あの「VS.マルク」を生オーケストラ演奏で聴けるなんて、とっても贅沢な時間でした。「VS.マルク」は変拍子なので、指揮するのがすごく難しい曲です。なのですが、竹本さんの指揮のご様子を見るのをすっかり忘れていました(大阪公演では忘れずチェックしたいです)。スクリーンには、ノヴァ撃破~マルクとの戦闘開始~マルク撃破シーンが。
この流れで、ゲーム同様、「カービィ凱旋」が演奏されました。前半の締めにふさわしい曲です。良いラストでした。
ここで休憩時間。第一部は終了です。
第二部、プログラム7曲目以降は、次回の記事で。
(……Part 4へ続きます。↓からどうぞ)
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